MEDIA PACS導入のいきさつ

◎ 三村先生には、共愛歯科医院のドクターチームを代表して、MEDIA PACS(メディアパックス)の運用の実際をお伺いしたいのですが、そもそもはどんな目的をもって導入されたのですか?

三村先生第一の目的は画像管理とコンサルテーションの強化のため。その際ダメ押しとなった決定理由は二点。一つは、画像データを院外のデータセンターに保管するシステムであること。火事になったり、PCがポーンと壊れてデータを救えなかったら一大事ですから。また、Visual MAX(ビジュアルマックス)が突然壊れても、MEDIA PACSがあれば画像を見られる。そういうイメージが湧いたからです。

MEDIA PACSで
CT画像の活用の仕方が

◎ PACSを導入されたのは2011年2月でしたよね?

三村先生はい。翌月の3月11日に東日本大震災があって大変驚きました。院外保存というネットワーク機能が重要なことをものすごく実感しました。
 ダメ押しのもう一点は、MEDIA PACSがDICOM(ダイコム)という医用画像の世界標準規格で運用すること。日本の歯科ではDICOM規格の認知度はありませんが、医科ではすでに標準化されていることは医科病院との連携を通してすでに知っていました。厚労省『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン』でもDICOMによる医用画像の運用を推奨している。しかも、MEDIA PACSは非DICOM画像でも簡単にDICOM変換できる機能を標準搭載しているから、メーカーや機種に制約されない画像活用ができる。DICOMはやはり決め手になりましたね。

ガラッと変わりましたね。

“MEDIA PACSをCT装置より先に導入”が、功を奏して…

◎ こちらでは「MEDIA PACSを先に入れてからCT装置を入れた」とお伺いしています。

三村先生歯科におけるCT画像の利用は、スライス画像、MPR画像(3次元断層画像)、VR画像(3次元立体画像)という3種の画像生成のうち、診断上、MPR(3次元断層画像)の断層面をどういう角度、どういうラインで切るかが特に重要です。当院では最初、CT撮影は病院に依頼して、依頼先でビュワーを見ながら断層面を切ってもらってフィルムでもらう方式。次の段階はデータでもらうようになりました。ただ、どちらも2次元的にしか見られない画像であり、しかも依頼先のビュワーで見て加工されたショットの画像だけ。位置も角度もある程度固定され、思うようにCT画像を活用できませんでした。

 そういう状況の中で、CT装置より先に、ドクターチーム専用の画像管理システムかつコンサルテーションシステムとしてMEDIA PACSの導入を優先すべきと考えたわけです。これが幸いして、CT撮影の依頼先から全データの入ったCD-ROMをもらえば、MEDIA PACSによって、全部3次元で、見たいところを見たい角度から確認できる体制になった。そこからCT画像の活用の仕方がガラッと変わりましたね。そうしてMEDIA PACSの運用が軌道に乗ったので、2年足らずでCT装置を購入したわけです。
 面白かったのは、MEDIA PACSでCT画像を扱っていたので、CT装置が入ったその日から、当然のようにCT画像を自在に扱えたことです。

◎ MEDIA PACS → CT装置という導入順はどう評価されていますか?

三村先生CT装置の導入当初は、付属の専用ビュワーが付いてきたのでCT画像をMEDIA PACSでガンガン映そうという考えが強くあったわけではありません。でもCT撮影をすればするほどMEDIA PACSのCT画像の扱いやすさが際立ってきて、MEDIA PACSは無用になるどころかより重要性が跳ね上がった。MEDIA PACS → CT装置という導入順序は最善手の対応だと思いますね。

オペ室 カウンセリングルーム

画像利用の実際  MEDIA PACSの使い分け

◎ 現在、画像の使い方、MEDIA PACSの使い分けはどんな感じですか?

三村先生MEDIA PACSに取り込んでいる画像は、口腔内写真、パノラマ、デンタル、セファロ、CT、MRIといったところです。
 インプラント治療ではCT画像をMEDIA PACSで表示して利用。CT撮影はエンドでも行い、根管治療の前にMEDIA PACSで部位の状況を確認するという使い方。顎関節の症例では、CT画像のほか、関節円盤の軟組織の状況の確認にMRI画像を使います。MRIの撮影は他の病院に依頼してDICOMデータでもらって利用します。矯正は専門医がCT画像を使いますが、シミュレーションソフトも利用しています。

 ドクターチームがCT画像で一番使うのはMPR画像。でも患者さんにはMPR画像はあまり伝わりません。VR画像は患者さんにイメージしてもらう時に利用するという使い方。患者さんが一番わかりやすい画像はデジタルカメラで撮った口腔内写真。CCDや位相差顕微鏡の動画はコンサルテーションに必要であればVisual MAXに取り込んでお見せします。
 保険診療への対応も含め、CTの利用はもっと広がっていくと思います。

「CT + PACS + ピエゾ」のインプラント治療へ

◎ MEDIA PACSとCT装置の連携運用をきっかけにスタートした新規の治療法があるとお聞きしましたが…

三村先生インプラント治療にピエゾサージェリー(超音波骨切削)を導入しました。ピエゾはドリルで切削する従来の方法とは違って、mm単位で細密な超音波切削ができます。たとえば「上顎6番近心5mm」のところの状態をMPR画像で確認して、実際5mmのところにピンポイントで直線的に穴を開けることができるので、当院のインプラント治療はサージカルステントをあまり使わなくなりました。
 ピエゾはCT画像の段階で細密な計測ができていないとその位置の判断ができない。パノラマでは、手前に歯があるから近心面は絶対見えない。CTで撮影して、ターゲット部位の距離や角度はMEDIA PACSで計測できるので、ピエゾを利用するオペが行えるようになった。CTで見えるからピエゾの機器を入れたということもありますね。

◎ オペの精度とともに、診療の低侵襲化という意味合いからもピエゾサージェリーの導入意義は大きいのではないですか?

三村先生そこが大事なところです。画像による検査・診断の精度が上がれば診療がしやすくなる。今すぐ治療できなくても、どういうことをやればいいのか診療のイメージが掴みやすくなる。そういう効用を実感しています。

「ドクターチームは“CT装置より先にMEDIA PACS!”と提案した。それが幸いしました。統一規格で運用する画像活用の自在さ、目視しやすい高解像度画像、さらに歯科に特化したCTビュワー機能の扱いやすさ。不可能だと思っていた画像運用環境が自然と確立できましたね」(三村先生)

「根管部もMEDIA PACSで一気に拡大してお見せします」
「かすかな亀裂もMEDIA PACSで拡大すると目視できます」

Visual MAXと併置して運用する

◎ PACSが配備されているのは、カウンセリングルーム、オペ室、三村先生専用室。いずれもVisual MAXと併置されていますね。

三村先生Visual MAXはタッチペンとキーボード。MEDIA PACSはマウスとキーボード。Visual MAXが良いところはペンで書き込みができること。だからMEDIA PACSでパノラマを見せて、Visual MAXでパノラマに書き込むという使い方。相乗効果を生む相互補完ができる体制が自然と生まれて大変良いですね。
 またMEDIA PACSは、患者氏名で検索すれば、MRI画像も、DICOM変換した口腔内画像も全部パッと出せる。別々のコンピュータ、別々のモニターに映し出すのではなく、MEDIA PACSのモニター1台で歯科で使う画像を一緒に全部表示できる。その使い勝手の良さが抜きん出ています。

◎ MEDIA PACSに対する患者さんの反応はいかがですか?

三村先生こんなの見たことがないという人がほとんどです。カウンセリングルームというクローズドな空間の中で画像を見せられ、説明を受けると、いろいろ質問も出てきますが、画面に見入って涙を流す方もいる。MEDIA PACSやVisual MAXで画像を見せられ、説明を受けることによって、われわれとの距離が一挙に縮まるのかもしれません。
 Visual MAXと並べて使って感じるMEDIA PACSの良い点は、画像が精細なこと。たとえば主訴以外にかすかな歯の亀裂が見つかったら、途中の説明はVisual MAXで画像を見せて行いますが、ポイントはMEDIA PACSを使って、口腔内写真から亀裂部位だけを画面いっぱいに一気に拡大してお見せする。この見せ方をVisual MAXでやると画像が荒れます。画像の説得力は解像度が大きく作用する。見えれば伝わり、見えなければ伝わらない。破折、亀裂、根管、根尖の説明もMEDIA PACSによって明らかに伝わりやすくなりました。

共愛歯科医院独自のPACS運用法

●MEDIA PACSのキャプチャー画像を活用する

三村先生ドクターチームを除けば、スタッフみんながCTもPACSも操作できるわけではありません。ネットワークの調子が悪くなったり、うまくPACSが開かなかったり、さあオペをやろうといった時にMEDIA PACSの動きが悪くなったら困ります。そういう対応を考えて、DICOMで保存している画像と同じものを、JPEGでキャプチャーして共有フォルダに入れています。そうしておけば、全部のVisual MAXから共有フォルダを開いて表示すれば、PACSをあまりうまく使えない歯科衛生士でも、ドクターが診断したCTの画像を説明の流れの中にポンと入れることができるからです。

◎ オペを想定した危機管理、情報共有の標準化を考えた画像管理法ですか? JPEGでキャプチャーしても元画像はDICOMで保存されているので何ら問題ないわけですね。

三村先生そうです。たとえば何mmという測定表示はJPEG化して解像度が落ちても、数字は読めるので画像が示している状況は伝わります。情報共有に断絶や陥没を生まない二重三重の対応を考えてそういう使い方をしています。

●同意書をDICOMデータでPACSに保存する

三村先生もう一点。MEDIA PACSの運用がスタートしてからは、同意が必要なものは、そのつど患者さんの直筆による署名入りの同意書をスキャンしてDICOMデータにしてMERDIA PACSに保存していす。DICOMデータだから署名も日付も改ざんできません。その制限がかかるから合意形成の証として、検査・診断画像と対で保存しています。

同意書読込用
スキャナー

歯科医の仕事は伝えること  勧めることではない

◎ 地域に貢献する共愛歯科医院のドクターチームのリーダーとして、三村先生が今考えておられるのはどんなことですか?

三村先生患者さんの口腔内の現状と未来をどれだけ伝えられるかということです。28本の歯の中で、1本の歯が、何らかの原因で失くなるとします。27本になったところで、そこでインプラントにするか、ブリッジにするか、デンチャ―にするかで、その方の人生はかなり違うと思うのです。それをしっかり認識していただくために、どれだけ伝えることができるか。それがわれわれの仕事。歯科医の仕事は伝えることであって勧めることではないと思います。だから、最初の段階でいかに的確な診断をして、伝えたいことを必ず患者さんに伝えて、あとは患者さんに選択していただく。他の歯のこと、体の全体を守ること、患者さんの人生を守ること・・・・患者さんが判断できるいろいろな伝え方をしないとやはり伝わりません。それをつなぐ基幹システムがMEDIA PACSですね。

◎ いろいろな伝え方ができるということですね。

三村先生そうです。そこを外さないためにMEDIA PACSを使うということ。MEDIA PACSで画像を扱い出したら、伝わる次元が一変しましたね。

森永 博臣 院長

Visual MAXとはレベルも意味合いも違う
基幹システムとしてMEDIA PACSを導入

「同意書まで一括管理ができる利便性。DICOMという縛りのある規格で同意書を保存すれば客観性が出てくる、と気づいたのは導入してから。たんなる画像データ管理システムではなくなったわけです」(森永院長)

森永先生居抜き利用の歯科医院からスタートした当院では、平成20年までは組織の一元化が運営上の最大のテーマでした。そしてMEDIA PACSの導入を皮切りに今後のグランドデザインに沿った初めての医院環境改善を敢行。今年平成25年初頭、接遇改善のために4つの個室を増設し、チェアは総数15台。現状の来院患者さんは1 日当たり100~110人。1ヵ月当たり1200人レベルというところです。
 21世紀の歯科医療ということを考えると、自由診療(高度な治療)とメンテナンスと高齢者医療(送迎と訪問)。それら3本柱のすべてがMEDIA PACSにリンクしてくると私は見ています。そういう意味ではVisual MAXとはレベルも意味合いも違う基幹システムとして導入しました。
 私、考えているんです。今後50年、はたちで来院された患者さんが70歳で、そのデータがDICOMデータで全部MEDIA PACSに入っているとするじゃないですか。それもペーパーレスで。それってすごくいいじゃないですか。しかも50年の歴史がすべて入っていて、データもすべてパパパッと目視できて、その上で、どういう治療が必要になるかという対応になる。その時患者さんは施設に入っているかもしれない。そこで50年間の資料を見て、カルテを見て、ということが一括でできるというのが21世紀の歯科医療では必要かなと思うのです。

◎ そのイメージはドクターチームから出てきたMEDIA PACS導入提案に触発されて固まってきたものですか?

森永先生統一規格による画像運用と高画質によって、診断精度や説明の精度が上がる。診療検討会での情報共有のブレが無くなる。ここまでは提案に触発されて想定できた。
 その上で同意書まで一括管理ができる利便性。DICOMという縛りのある規格で同意書を保存すれば客観性が出てくる、と気づいたのは導入後。付録の機能だったものが21世紀の医療としては大事かなと気づかされた。たんなる画像データ管理システムではなくなったわけです。

◎ 森永先生の頭の中では、今後は枝を出していくのか。こちらの診療所に求心して幹を太くしていくのか。どんな絵が描かれていますか?

森永先生21世紀の歯科医療を描く時、一番わかりやすいのは訪問歯科。高齢者医療を考えたら訪問診療は絶対に必要です。高齢者医療には、エンドチームとかインプラントチームとか、チームでアプローチしていく時代になると思います。そうした流れの中での進み方として、ここで大きな歯科総合医院を作ろうというイメージは私にはありません。歯科衛生士を育てるプロ、歯科技工士を育てるプロと提携して、1つの実践的な学校として、当院で人を育てて、その上で、歯科クリニックに派遣していく。そういうゆるい経営で運営する実践的な学校。それを10年後から、財務と労務に注力して展開したい。そんなビジョンが浮かんでいますが、輪郭がハッキリしてきたのはMEDIA PACSを導入してから・・・。すごくイイ感じです。

医)共愛会 共愛歯科医院のMEDIA PACSフォーメーション

医)共愛会 共愛歯科医院 熊本県上益城郡益城町
歯科医師7名(うち非常勤2名)、歯科衛生士23名、歯科技工士4名、歯科助手3名、受付6名、送迎2名、清掃4名

医)共愛会 共愛歯科医院
三村 彰吾 先生