MEDIA PACSで“YOSHINAGA アーカイブ”を作ろう

◎ 地域に貢献する歯科総合医院の牽引者として、先験的な医療実践を推進されてきた吉永先生が、MEDIA PACSを画像管理の最善化のために導入されたとお聞きして、思い出したことがあります。2006年にビジュアルマックスの運用についてお伺いした時、「IT化と画像のデジタル化は、歯科医療のありようを一変させる」と予見されていましたね?

吉永先生そう認識して、ビジュアルマックスを導入したのは2005年10月。それ以降、画像機器のデジタル化を進め、CT装置も入れ、MRIは大学病院に撮影を依頼する体制をつくるなど、画像を説明に利用するためのインフラ整備に注力してきました。
 その一方で、画像管理上最大の宿題となったのがスライドのデジタルデータ化です。画像管理専任のスタッフを採用して変換作業をスタートしたのですが、当時のスキャナーは、パノラマを800dpiで読むと1 枚スキャンするのに30分ほどかかり、PCもよくフリーズしました。そこで400dpiに下げたら、画像が荒れて使えずガックリきたり…。
 そういうことで困っていた時期に、「PACSというシステムが出て、口腔内の現状を説明するのに、歯科で使われている画像はこのシステム1台で見せられます」という、コンサル機能一辺倒のデモを受けました。でも、画像を説明に利用するツールも体制もすべて整っていた。困っていたのは画像管理問題である。何も興味が湧かず、結構冷たくお断りしたいきさつがあるんです(笑)

◎ いきさつは弊社PACS 担当から聞いております。それから1年ぐらい経ってからですね、「先生、もう一度、リベンジの機会をください」とお願いしたのは?

吉永先生そうです。それが、今度は画像管理のど真ん中を狙ってきた。デモを受けたら、驚いたことに、聞く話、見る話、すべて腑に落ちたんです。それで、その場にすぐ全スタッフを集め、「これはMEDIA PACSと言い、私が願う画像管理を実現してくれそうに思えた初めてのシステムだから、導入することに決めた。臨床例のデータをすべてPACSに入れて、YOSHINAGA アーカイブを作ろう!」と宣言してしまったんです。

◎ これならいけると感じたのはどんなところですか?

吉永先生次の点です。

  • ①  医科と同じくDICOM(医用画像の世界標準規格)で画像を運用できる。
  • ②  歯科で利用している画像規格はほとんど非DICOMの上、モダリティの機種やメーカーによってかなりバラバラだが、それを即座にDICOMに変換して取り込める機能を搭載している。
  • ③  画像データは院外保存。ネット上のクラウドサーバーに保存される。だからデータ保存の対応能力にも不安がない。
  • ④  ②③によって私を悩ませていた最大の懸案だったスライド画像のデータ管理と保存についても、道が開ける。
  • ⑤  画像管理、検索、画像配置、画像の出し入れ、画質、操作レスポンスが良く、歯科の画像を快適に扱える。
スライド画像のデータベース

画像管理で難関だったのはスライド画像のデジタルデータ化。20〜30代に診療した過去画像を取り込み、長期症例データを丸ごと活用していこうという構想が“YOSHINAGA アーカイブ”のそもそもの原点。

画像管理の最善化のために
“YOSHINAGAアーカイブ” づくりから
スタートしたMEDIA PACSの運用。

YOSHINAGA アーカイブは過去症例をずっと継続的に利用できる収蔵庫

◎ YOSHINAGA アーカイブによって、何が動くのか。何を動かすのか。どんなイメージを持ったのですか?

吉永先生「長期経過症例」から学べる環境を作りたいということです。
 海外には50年の長期経過症例を持っておられる先生方が結構います。その先生方は、自分がずっとやってきたことが、本当に経過的に正しいかどうかということを検証し、それを全部論文にしています。私は開業医だからそういう論文は書けませんし、自分だけの臨床例だけでは難しいところもありますが、自分の患者さんをずっと継続的にきちんと診ていくという姿勢はそうした先生方の姿勢に通じるものです。
 私は、1984年に矯正治療を行った妻を第1号患者として、2013年3月で、歯科医になってちょうど30年。私が20~30代の時に一生懸命歯科医療をやったつもりだった症例の中に、「壊れてきた」、あるいは、「歯が変形してきた」「歯が傾いてきた」と言ってくる患者さんが出てきました。
 なぜ壊れるのか。どう変化しているのか。歯科医としての私は、それを究明してから再治療したい。そういう症例にもすべて対応していくには、過去のすべてのカルテから、すべてのスライドから、ポンと一瞬にデータが出てきて、現在の状況と比較できるシステムを構築したかった。MEDIA PACSを知ってそれを作ろうと思った。イメージとしては、「これから先ずっと過去症例を継続的に利用できる収蔵庫」。だから“YOSHINAGA アーカイブ”なのです。

◎ 「長期経過症例」から学ぶことの一番の意義はどんなところにありますか?

吉永先生「長期経過症例」を画像で目視したいのは、治療後の経過変化から、壊れてきた真因、本当の原因を突きとめたいからです。壊れたのは、真因を除去していないから抵抗力が落ちて壊れたということ。だから次はここ、次はここと壊れるわけです。その真因を突きとめるには長期経過症例が絶対必要なんです。

◎ 症例データを扱う上で、吉永先生は何を鉄則とされていますか?

吉永先生『整理整頓』です。整理とは、不要なものを捨てること。整頓とは、必要なものがすぐに取り出せるように、きちっと並べ替えること。そういう本来的な意味での整理整頓です。
 我々にとっての財産は、カルテなんです。スライドなんです。データなんです。それは、どんなに大事に保管しても、「必要な時に出ないものはゴミ」。必要な時に必要なデータが出るという環境がMustでありBest。画質/情報が劣化しないことも大事です。だからMEDIA PACSの画像管理能力に着目したわけです。

メイン診断コーナー カウンセリングコーナー

YOSHINAGA アーカイブが動き出した

◎ PACSを導入してYOSHINAGA アーカイブが動き出して3年め。どんな変化が起こっていますか?

吉永先生まず、診療検討を行うカンファレンスのスタイルが変わりましたね。
 たとえば20年経過症例の術後の変化を、カンファレンスの場で、すべてのデータをスタッフ全員で見て、考えて、「なぜ最初にここが壊れたのか・・・次になぜここがやられたのか・・・実は真因はここだった。これを治さないと今後も、1本ずつ無くなっていくよ」ということが、20年経って初めて説明できるようになった。MEDIA PACSが無ければそういうスタイルのカンファレンスはできなかった。この点でYOSHINAGA アーカイブは、カンファレンスの場では教育システムとして役立っています。

◎ ドクターチームへの指示、あるいは臨床に対するドクターチームの取り組み方に変化はありますか?

吉永先生PACS導入以前から、再初診の患者さんが来たら過去のカルテを全部読むようにと指示してきました。たとえば10年前からやっている治療であれば、10年前のカルテから見ると、注意事項や患者さんの要望までいろいろなメモが書かれている。この人はこういう性格か。この人はこういうことが嫌いなのか。今度こういう治療をしてもうまくいかないなとか…そういう流れの中で確認していかないと患者さんは見えてきません。それがMEDIA PACS導入後は、カルテばかりか初診時からの経過画像も目視できるようになった。そこからスタートして現状を読む診療スタイルに変化しています。

◎ PACSの導入抜きには考えられないということで、特に印象に残った患者さんはいらっしゃいますか?

吉永先生昨年初め、インプラント治療をして20年経過した患者さんが二人来ました。純チタンのフィクスチャーが途中からポッキリ折れた症例です。純チタンに劣化はあるのか? 私はあると思う。そういう経過を追って初めて原因というものはわかる。それをメーカーに「こういうことがありますよ」と症例データを提出したところ、症例データを確認して改善を図ってくれました。
 このことを大学の講座で話したところ、「吉永先生、チタンが20年もてばいいんじゃないですか」「そう、患者さんは問題にしないかもしれない。でも君が患者だったら、一生もつほうがいいと思わない?」と問い返したら、受講生たちはどこかホッとする表情でうなずいていました。必要な時に必要なデータが得られれば、患者さんの思いを歯科医がわが身に置き換えていける。臨床データがさまざまな改善に結びついていく。実はこれも、MEDIA PACSの重要な効用だと私は実感しています。

◎ 懸案だったスライド画像問題はその後、進展しましたか?

吉永先生PACS導入後ほどなく、メディアさんの担当が、以前は30分かかっていたパノラマを3分でスキャンできるスキャナーを見つけてくれたので、ずいぶん改善されています。とは言っても数が多いので、まだしばらくはかかるでしょうね。

“YOSHINAGA アーカイブ”の操縦席とも言える画像管理専任スタッフのデスクトップ。向かって左側は、パノラマ画像のスキャンに1枚30分もかかっていたものを3分に縮めた高性能スキャナー。

MEDIA PACSの画像管理能力は抜群にいいです

◎ そもそも画像管理を最善化するためにPACSを入れた結果はいかがですか?

吉永先生抜群にいいですね。

◎ 吉永歯科医院の画像管理は、歯科大学や医科病院を含む地域の医療連携の要ともなるファクターですよね。

吉永先生それも視野には入っていますが、すべてはこのホームグランドの対応能力が、いかに患者さんに寄り添った歯科医療を進められるかにかかっています。その絶対的なベースとして、継続的に強化していかなければならないのがYOSHINAGA アーカイブであり、MEDIA PACSによる画像管理です。そういう構想から画像管理専任スタッフにお願いしているのは、PACSで「家族履歴」が全部わかるようにできないかというデータ管理の標準化です。

 私が30年臨床をやってきて、同世代の臨床資料は大体撮影しているので残っています。その子供たち(第三世代)も来院していれば資料は残っている。だから、私の下の世代でその次の世代になってきた時に、うまく三世代の家族履歴ができないものかと期待しているんです。

◎ 吉永先生の「自分一代で終わる歯科医療ではダメなんだ」という持論を、今、反芻しています。

画像管理一辺倒からPACSをコンサルテーションにも

◎ 弊社のPACS担当課長は、ドクターチームから依頼されてPACS運用の教育を行ったところ、全員ものすごく興味を持たれたそうです。吉永先生の独占物だったのが崩れるかもしれませんよ。

吉永先生アハハハ。確かにPACSの運用はここまでは画像管理一辺倒でしたからね。コンサルテーション用のPACS専用ルームも新設したので、これからようやくコンサルテーションツールとして、ドクターチームにPACSが降りていくことになる。PACSを運用するケースは常態化していくと思いますね。
 当院ではCTを保険で使うケースは多いと思うのでPACSの運用は期待できます。インプラントの患者さんにしかCTを撮らないのはおかしい。エンドでも撮って良いわけですから。歯周病で骨吸収を起こしていても、2次元X線画像では正確な判断は不可能である。その画像から、骨があるかないかは若い先生では読めません。だからCTを撮り、3次元の画像で診断し、カウンセリングしたほうがいい。「こうかな?」ではなく「こうだ」になるからです。埋伏歯も上顎洞にものすごく近いケースもある。CTは保険でも活用できるわけですから。それを活用しないままにオペを行っていること自体が悪だと私は思います。
 CTをあまり使うと被爆量が問題ではないかという議論がありますが、何枚撮るべきか、何回撮るべきかは、ドクターが判断すべきもの。医療というものはすべて患者にリスクを与えます。でも、CTを撮って状況を把握して行うことの医療安全上の貢献は、実に大きいと思います。

「必要を感じたらCTで撮る」を基本にCTを利用。保険診療でも必要を感じたらCTを撮る。差別化のためのCT利用は意味をなさないと思います。

座右のスーパーチャージャー

◎ YOSHINAGA アーカイブ作り=PACSの運用には、患者さんに対する愛情と責任を、歯科医療に対する愛情と責任で対応するという強い意志を感じてなりません。

吉永先生イチロー選手が超一流だと言われる所以は、自己管理能力があり、きっちり成績を残して、ファンを楽しませるということをやりきるからですよね。我々も、いい仕事をすることが患者さんの満足につながる歯科医療を究め続けたいのです。
 私は資料の5年保存をクリアするかどうかに価値は置きません。20数年前の資料も保存しているのは医療人の基本だから、持っておかないといけません。知らないことが出てきたら、もっと勉強しますから待ってくださいと考える医療人でありたいと心がけています。
 医療人に一番大事なのは診断能力です。そこに確証を与えるのは、初診からスタートする継続的な資料です。そこを外さないMEDIA PACSは、座右で私をドライブする強力なスーパーチャージャーという存在ですね。

医社)徳治会 吉永歯科医院のMEDIA PACSフォーメーション

医社)徳治会 吉永歯科医院 熊本県宇城市 歯科医師8名 歯科衛生士19名 歯科助手1名 歯科技工士9名 受付3名 事務/清掃13名 分院数2院

医社)徳治会 吉永歯科医院
吉永 修 院長